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デザイン思考 リバースブレインストーミング 課題を悪化させて本質を掴む

Tags: デザイン思考, アイデア創出, 課題解決, リバースブレインストーミング, 製造業

デザイン思考 リバースブレインストーミング 課題を悪化させて本質を掴む

プロジェクトの推進において、既存の課題に対する解決策がなかなか見つからなかったり、アイデアが陳腐化したりすることはないでしょうか。特に製造業の現場では、長年の慣習や技術的な制約から、発想が特定の方向に固まってしまいがちです。デザイン思考は、このような状況を打破し、新しい視点から問題に取り組むための強力なアプローチを提供します。

今回は、デザイン思考のアイデア創出フェーズで非常に有効でありながら、通常のブレインストーミングとは一線を画す「リバースブレインストーミング」という手法をご紹介します。この手法は、問題を「解決する」のではなく、あえて「悪化させる」方法を考えることで、課題の本質を深く理解し、斬新な解決策を導き出すことを目指します。

リバースブレインストーミングとは

リバースブレインストーミング(Reverse Brainstorming)は、文字通り「逆転の発想」を用いるブレインストーミング手法です。通常のブレインストーミングが「どうすれば目的を達成できるか」「どうすれば問題を解決できるか」を問うのに対し、リバースブレインストーミングは「どうすれば目的達成を妨げられるか」「どうすれば問題を悪化させられるか」という逆の問いを立てます。

この逆説的なアプローチには、以下のようなメリットがあります。

リバースブレインストーミングの実践ステップ

リバースブレインストーミングは、以下のステップで進めることができます。チームで行うことで、多様な視点からのアイデアを引き出すことが可能です。

ステップ1: 課題(または目標)を設定する

まず、焦点を当てたい具体的な課題や達成したい目標を明確に定義します。「製造ラインの不良率を下げる」「顧客満足度を向上させる」「新製品の市場投入を成功させる」など、具体的であればあるほど、次のステップでの発想が深まります。

ステップ2: 問題を「悪化させる」アイデアを発想する

設定した課題に対し、「どうすればこの問題をさらに悪化させられるか」あるいは「どうすればこの目標達成を完全に失敗させられるか」という問いを立てます。ここでは、批判や評価を一切せず、常識にとらわれない自由な発想を促します。例えば、「製造ラインの不良率を下げる」という課題であれば、「どうすれば不良率を最大化できるか」を考えます。

といった具合に、考えられる限りの「悪い」アイデアをリストアップしていきます。量は質に転化するという考え方で、できるだけ多くのアイデアを出すことが重要です。

ステップ3: 「悪化させる」アイデアを「逆転」させる

ステップ2でリストアップした「問題を悪化させる方法」それぞれに対し、今度はその「逆」を考えます。これが効果的な解決策のヒントとなります。

このように、「悪い」アイデアの裏側にある「良い」状態や行動を洗い出していきます。

ステップ4: 「逆転」アイデアから具体的な解決策を導出する

ステップ3で得られた「逆転」アイデアは、そのまま実行可能な解決策である場合もあれば、さらに掘り下げる必要がある場合もあります。「品質の高い部品選定」であれば、具体的にどのような基準か、どのサプライヤーと連携するかといった詳細を検討します。「定期的なトレーニングプログラム」であれば、どのような内容か、誰が担当するか、頻度はどうかなどを具体化します。

ここでは、導き出された解決策候補の中から、実現可能性や効果の大きさを考慮して、優先順位を付けたり組み合わせたりしながら、実行に移せる具体的なアクションプランを作成します。

ステップ5: 解決策を評価・具体化する

導き出された具体的な解決策が、当初の課題解決や目標達成にどれだけ貢献するかを評価します。必要に応じて、プロトタイピングやスモールスタートで試行し、効果検証と改善を重ねるプロセスに入ります。

製造業プロジェクトでの応用例

リバースブレインストーミングは、製造業の多様なプロジェクトで活用できます。

実践のヒントと注意点

まとめ

リバースブレインストーミングは、既存の思考パターンから抜け出し、課題を新しい角度から捉え直すための強力なデザイン思考ツールです。特に、行き詰まりを感じているプロジェクトや、抜本的な改革が必要な状況において、この「課題を悪化させる」という逆説的なアプローチが、予期せぬ突破口を開くことがあります。

製造業のプロジェクトマネージャーの皆様には、ぜひチームでこの手法を試していただくことをお勧めします。通常のブレインストーミングでは得られなかったユニークなアイデアや、課題の本質を深く理解するための重要な気づきが得られるはずです。既成概念にとらわれず、発想を「逆転」させる勇気が、プロジェクトの成功、ひいては組織のイノベーションにつながります。